物理化学実験では滴下する液滴の数を手動カウンタで計数する実験があるが,この滴数を自動的に計数する方法はないだろうかと実験担当教員から相談を受けたのでArduinoを使って液滴の自動計数器を製作した。
図1において,液滴がフォト・インタラプタの間を通過するとき,光源からの光が液滴で屈折するので受光部のフォトトランジスタの出力電流が変化する。この変化をとらえて滴数を計数する。
図2のようにLEDとフォト・トランジスタでフォト・インタラプタを構成し,受光部のフォト・トランジスタの出力電圧をオシロスコープで観測する。
図3はフォトトランジスタの出力電圧をオシロスコープで観測した波形である。液滴の前縁と後縁で屈折が起こり二つの電圧ピークが現れると予想したが前縁の電圧ピークは微小なものであった。
LEDの種類や電流制限抵抗を変化させながら出力電圧の振幅が最大になるLEDと電流制限抵抗を探ってみた。
赤色LED+電流制限抵抗2KΩのとき最大振幅を観測した。図4-(1)
図4-(2)は参考のために光源に赤色レーザを用いた場合である。液滴の前縁と後縁で顕著な出力電圧の変化が現れている。
この予備実験の結果から光源に赤色LED,電流制限抵抗2KΩを使うこととした。
フォト・トランジスタの出力電圧をArduinoのアナログ端子に加える。
計数した値をLCDに表示する
表面張力を液滴法で求める場合はビュレットの液面が開始目盛りから終了目盛りの間で滴数を計数する。ビュレットの側面に液面を検知するセンサを2ヶ所設けて自動的に計数の開始と終了を行えば,実験者が液面を見て手動操作する必要がない。また,開始から終了までの時間を計測すれば粘度計としても利用できる。液面の検出には反射型フォトセンサRPR-220を用いる。
さらに温度センサーを設けUSB-シリアルインターフェースを介して計数データや温度データをパソコンに送信しパソコン側で計測データをロギング(記録)し,ロギングしたデータから表面張力などを自動的に計算し表示させることも可能である。
また,この滴数計数装置にpHセンサーや電磁弁を組合わせれば中和滴定などの自動化にも応用できる。
この装置は東京都立科学技術高等学校・専攻科においてKosaka,Inage,Fukadaの3名により開発し詳細は別途公開する。
upload 2009.10.03