不具合の内容:
- 旧版KiCad 4.0.x をアンインストールして KiCad 5.xをインストールしたとき
- 旧版4.0.xのフットプリントライブラリを参照しようとする
- フットプリントライブリ参照が激遅で使用に耐えない
KiCad 5.0 実習テキスト「KiCad Basics for 5.0」を購入された方からフットプリント割付の際に実習テキストで示しているLED_SMDライブラリが表示されないとお問い合わせがあった。
>私の所では「LED_SMD」が表示されません。LEDは「LEDs」というものしか出ません。
LEDsは旧版KiCad 4.0.x で提供されていたライブラリでKiCad 5.0.xにはバンドルされていない。
- 参考 KiCad 5.0.0 はフットプリントライブラリの扱いが4.0.xと大きく異なっている。
- ライブラリの名称が一新された
- ローカルにインストールされたライブラリを参照し,4.0.xで採用されていたGithub参照は行わない
- ライブラリ管理ツール,編集ツールのUIが使いやすく変更された
原因の推測と対策
旧版のライブラリがリストされるのは,過去にインストールされていたKiCad 4.0.xのフットプリントライブラリ環境を 新たにインストールした KiCad 5.0.x が引き継いで参照しているのではないかと推測し対策を考えた。
- KiCad のフットプリントライブラリ参照設定ファイル fp-lib-table が4.0.xアンインストール時に削除されずそのまま残っている。
- 5.0.x をインストールするとき5.0.xインストーラは既にfp-lib-tableがあるので5.0.x用のfp-lib-tableをインストールしない。
- 結果,5.0.xは消されずに残っている4.0.x用のfp-lib-tableにより旧版4.0.xのフットプリントライブラリを参照しようとする。
考えられる解決策
- 各種設定ファイルを収容しているフォルダを丸ごと削除する。
- 削除するフォルダのパス
windows:C:\Users\ユーザ名\AppData\Roaming\kicad\
mac:/Users/ユーザ名/Library/Preferences/kicad/
Linux:~/.config/kicad/ -
WinのAppData,macのLibrary(ライブラリ),Linuxの.config は隠しフォルダになっている。
- 削除するフォルダのパス
- 当該フォルダ削除後の後処理
- 回路図エディタ(Eeschema)起動すると図1のグローバルシンボルライブラリテーブルのダイアログが開くので,デフォルトの…(推奨) を選択して[OK]クリックする。
- フットプリントライブラリを参照するツール(Cvpcb,Pcbnewなど)を起動すると図2のダイアログが開くので[OK]をクリックする。
お問い合わせいただいた方に上記の対策をお知らせしたところ,対策を実施され5.0.xのライブラリを参照するようになった旨の返信をいただいた。
Twitterで 「KiCad5.x のフットプリントライブラリのgithub参照が激遅で使用に耐えない」とか「KiCad5.xのフットプリントライブラリをgithub参照からローカル参照に変更した」等のtweetを見ることがあり「Kicad 5.xはデフォルトでローカルライブラリを参照するのに何故?」と思っていたが,5.xが4.0.xの動作環境を引継いでしまいKiCad5.xデフォルトの動作をしていないためと今回の事例から分かった。
KiCadは後方互換を考慮しないでバージョンアップするので旧版の動作環境を引き継ぐと今回のような不具合を生じる。新版インストール前に動作環境設定フォルダを手動削除して旧版の動作環境を捨て去っておくことを推奨したい。