Maker Faire Tokyo 2023 でのトーク「老Makerは死なず」のスライドです
第1日目 メインステージ 16:30〜16:50
こんにちは 小坂貴美男と言います
これから,老Makerは死なずというタイトル・テーマでお話したいと思います
少しのあいだお付き合いください。
Maker Faire などで展示をしていると中高年の方から
「悠々自適でいいですね〜」とか
「自分も,仕事リタイアしたらモノづくり活動したい」「今は仕事が忙しく暇がない」とか
そういう,お話をよく聞きます。
そのときは,期待を裏切らないために目一杯楽しく物作り活動にいそしんでいる様子をお話するのですが…
その実際は…ちょっと違うんです。
リアル進行中の老後の私のMaker活動についてお話します。
自己紹介です
1952年生まれで70才を超えました。
無職です。ときに技術系ライターを自称しています。
今回はブース:(E-05) O’Baka Projectで出展中でボトルサーキット(瓶詰め電子回路)を展示しています
SNSのアカウントはこれです。
2016年3月 63才で仕事から完全リタイアしました。元の仕事は高校の教員でした。
リタイア後はMaker活動に全振りする生活を考えていて共同工房ーテックショップの会員になりました。
ほぼ毎日テックショップに顔をだしていました。
メーカーフェアやNT金沢を始めとするイベントに出展したり,meetupに参加したり
自分で技術セミナー(KiCadの講習会)を開いたりして充実した活動をしていました。
想定通りの充実したMake全振り生活です。
完全リタイアした年の10月にMaker Faire new york 2016 にボトルサーキットを出展しました。
仕事との日程調整が不要で気楽に海外に行けるのがうれしかったです。
作品にブルーリボン,レッドリボンを受賞しました。
また,これは,その頃の作っていたバレットタイム撮影システムです。映画マトリックスのあれです。この撮影システムは,2016年のラズパイコンテストで技術賞を受賞しました。
完全リタイアしてから本当に充実したMaker活動をおくっていました。
が,2年半ぐらい経った頃…2019年の秋頃に,,,この生活にちょっと疲れはじめました。
時間はたっぷりあるから,もう少し余裕を持とう
ちょっと工作を休もう…
家でゴロゴロして過ごす…
最初はちょっと休んだら製作にもどろうと思っていたのですが…
毎日が,こんな感じでです。
非生産的生活の極み/典型的なダメじいさんの生活です。
こんな自堕落な生活は蜜の味。ダメとはわかってもても簡単には抜け出せません。
そんな生活をして製作活動が停滞していたら…
自宅作業スペースが物置と化して悲惨なことになりました。
テックショップも退会していたので内外とも製作環境が壊滅しました。
技術系Blogの更新/SNSの投稿も途絶えました。
『Maker Faire やSNSで面白い作品を発表されていた年配のMakerさんがいつのまにか居なくなった』というのがよくあります。(その理由は私とは違うと想うのですが…)まさにその方々と同じように,私もmake界隈からフェードアウトしつつある状況でした。
何でこうなったんだろう..と改めて思い出してみると,
リタイアして有り余るほどある時間を趣味に振り切った生活を始めたが,
メリハリがなく飽きてしまった。息切れしてしまった。
仕事ー趣味の生活だと思考の切り替えがあってメリハリがあって飽きるようなことは全くなかったですね。
疲れて製作を休んで自堕落生活に引き籠もってしまうと,
他のmakerさんとの交流がなくなった。
テックショップを退会し….meet up などにも参加しないという状況になったのですから当然ですね。
交流が途絶えると情報も途絶えます。
web(インターネット)から情報が得られるので『情報断』とはならないだろうと思われるかも知れませんが,webから新しい情報を引き出すためのseed(種,手がかり)となる情報さえも無くなるのです。
新しい情報が無い→webで調べるきっかけも何もない→製作のネタが何も出てこない。
この「作るネタがない」が製作活動に戻れなかった最大要因だと思います。
そのままでは,確実にフェードアウトして行ったと思います。
ですが,踏みとどまりました。
かろうじてMake界隈とつながった糸がまだ残っていたから踏みとどまれました。
技術本(Kicad入門書)を発刊しており,利用者の方からのご意見フィードバックあったこと。
製作停滞期間中にあってもMaker Faire や NT金沢や技術書典などのイベントに細々と参加していたこと。(見学のみや旧作の展示で参加)
ネタ切れになったので,2020年のMaker Faire には超旧作…45年前の20代の頃に作った「パソコン以前の手作りマイコン」を出展したほどです。
イベントに参加し皆さんの作品や活動にインスパイアされたり,
「作品制作している自分が好き」という思いもあり,
.2022年中頃に物作り活動の再開に向けて真剣に始動することにしました。
2019年の秋に活動が停滞してから3年ぐらい経っていました。
まずは作業スペースの確保です。
片付け/大掃除で作業スペースを復活させました。
パソコンの開発環境なども3年前のモノですから再構築しました。
長らく放置した3Dプリンタなども再調整して稼働できるようにしました。
そして,ぼちぼちと製作活動を再開して今に至りますが,
再開後はmake活動全振りは止めました。
Maker活動に全振りしていた頃の轍を踏まないように,
Maker活動とは全く異なるアクティビティ…自転車旅を並行しておこなっています。
元々,自転車旅行の趣味はあったのでMaker活動のカウンター(対抗するモノ)として”意図的に”取り組むことにしたのです。趣味の相互補完で自堕落生活に陥ることはないだろうと考えたわけです。
再開しましたが3年ぐらい前で自分の技術知識が止まっていて現状浦島太郎状態です。
新しいデバイスとか開発フレームワークなどについて勉強しつつ試行錯誤しています。
コロナ感染を避けるためオンライン・ミートアップが増えて,年寄りでも若い人に混じる負い目を感じずにミートアップに参加できるのがうれしく/有り難いです。
まだまだ,以前の状態にまで復活していませんが楽しいです。新作のアイデアも出てきそうです。
でも,自分の年齢を考えると,いつか..というか,近い将来,Maker活動からフェードアウトするときを迎えるのは間違いありません。
これは避けられません。
今想うのは…そのとき,不本意に終わるのではなくmakerの矜持を持ち続け,やりきった満足感の中で終わりたい。
「オールドMakerは死なず,ただ消え去るのみ」とカッコよく終わろう…そう言えるような自分でありたいと思います。不本意に消え去りそうになった自分ですので本当に強くそう思います。
以上,長々と老人特有の自分語りになってしまいましたがお付き合いいただきありがとうございました。仕事リタイア後にモノづくり活動をしたい中高年の方,もう,している方の多少の参考となれば嬉しい限りです。
ありがとうございました。これで終わります。